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大矢顧問 県立看護大学で透析授業を行う


            岐阜県立看護大学で82名の1年生を前に、
                        「透析患者の生活」語る

                         
 

                                 大矢正明NPO岐腎協顧問
  NPO法人岐阜県腎臓病協議会の大矢正明顧問は、岐阜県立看
護大学からの「成熟期看護方法1」授業の協力依頼に応えて、11月16日(木)
「透析患者としての生活」について語った。
 この授業は、一年時の将来看護師、保健師、養護教諭、助産師を目指す学生
82名に対して「成熟期にある人々の生活実態を学び、保健医療福祉活動の必
要性及びその制度を理解する」ことを目的に、「透析患者が病気とどのようにつ
き合い、日常生活の中でどのような調整をしているか」を理解できるようにしたも
のです。

 仕事でのストレス、不規則な食生活
 大矢顧問は、最初に自己紹介のあと、なぜ透析導入に至ったか説明しました。
小学1年時に、急性腎炎になって長期欠席したこと。その後大学卒まで特に異
常なく経過したが、大卒後、22歳で県立高校教諭として働き、授業が理解でき
ない生徒へどのように指導すべきか悩んだことに加えて、2年目に生徒会顧問
になり、当時大学紛争の影響で高校生も「長髪許可」「制服廃止」などの生徒会
運動が活発だったため、職員会と生徒会との間で教師として悩みストレスをため
たこと。また不規則で偏った食生活などの影響がでて、職場での健康診断で、
尿たんぱく、血圧高め、そして血圧検査の結果、クレアチニン高めなどで、医師
より「食事に注意、激しい運動をしないこと」など注意を受けたことなども語りまし
た。
 検査入院したこともあり、高血圧の原因となる塩分摂取を一日6g以下に、リン
、カリウムの多い食物の摂取に気を付けるように指導されたが、腎臓病は沈黙
の病気と言われ痛くも、痒くもなく静かに進行するため、普通の教師と同じように
体育系の部活の顧問を担当していた。
 ところが36歳の時、疲労感を強く感じ、顔色も良くなく、かゆみ、そして
夜、心臓があぶついたため医師の診察を受けた結果、慢性腎臓病と診断された。
今から考えるとこの時期の生活、特に食事管理、自己管理が一番大切だったが、
50歳になった平成9(1997)年2月26日、ついに透析生活をスタート。

 現在透析生活21年目・・衰える筋力、体力
 現在、透析21年目になり、月水金と一日置きに通院、9時30分から14時30
分まで5時間透析して、穿刺回数も約3130回を数える。
 痛感していることは、筋力、体力の衰え(サルコペニア)が甚だしいこと。
移植をしない限り死ぬまで続く透析生活、ならば楽しく、充実した生活を送りた
い。自分にとって透析生活とは、命を繋ぐための仕事だと思って。
 大矢顧問は日常生活で留意していることとして以下の4点を語った。

1) しっかり透析すること

  長時間(自分5時間)、血流量(自分250ml〜300ml)・・血流量と透析液流
量の比率は1:2が望ましいと言われる。
透析効率(kt/v)1.6以上、自分は2
 
前後月2回の血液検査結果の検証 
  主な血液検査の項目    透析患者標準値(透析前)   自分の最新数値11月20日
   尿素窒素    80ml/dL以下   62.4ml/dL
   クレアチニン    12mg/dL以下    10.7mg/dL
   リン     6.0mg/dL以下     5.6mg/dL
カリウム・・7.5mEq/Lになると重篤な不整脈から失神やがて心停止     5.5mEq/L未満       5.8mEq/ L
  ヘマトクリット
        (貧血)
     30%以上     38.3%

2) しっかり食べる
  腹8分目を目安に3食(朝、昼、晩)きちんと食べ、水分・塩分・カリウ
  ム・リンなどに気を付けバランスの良い食事をとる〜家族の協力

3) 適切な運動に心掛ける

  無理のない程度の運動・・ フィットネスクラブで定期的に運動している

4) 心の持ち方
                                                               くよくよ悩まない、自分を病人と思わず普通の人と同じ感覚で生活する。
  自分の趣味(歌うこと/週1回合唱練習)を楽しむ。

 一方合併症については以下の不安な思いを語った。

◇避けられない合併症との戦い
  透析患者はリンとカルシュムの関係で血管が石灰化し動脈硬化が避けられず。
  免疫力低下のため血流血管をきれいにし治癒力・免疫力をつけることが大切
  定期的にABI検査で血流が十分かどうか検査の必要。
  自分の場合の合併症の不安 青字の部分は大矢顧問の現在の既往症
 ●脚のイライラ、むずむず
 ●動脈硬化の進行による脳梗塞、脳出血、下肢動脈硬化症(閉塞性動脈硬化
    症)、脳動脈硬化症(隠れ脳動脈)
 ●心不全・・体内の水分量増加のため心臓への負担〜長期透析による心不全
   の恐怖がある。実際自分は現在狭心症である。
 ●骨がもろくなり、骨折しやすい・・副甲状腺機能亢進症

◇患者会活動としてNPO法人岐阜県腎臓病協議会顧問(前会長)、美濃加茂地
   域腎友会会長として活動している以下のことを語った。
 ◎これ以上透析患者が増えないよう腎臓病の早期発見・早期治療に関する
  知識の普及と啓発事業で社会貢献活動をしている。
 ◎腎臓病患者(透析患者)の命とくらしを守るために福祉医療制度等の腎臓
    病に関する医療・社会保障制度の拡充及び現制度の継続要望活動
  「常に私たち透析患者は、多くの支援者、多額の国税で生かされている
  ことに感謝して患者会活動として社会貢献活動をしたい」
と大矢顧問は
  強調しました。
 
   授業の最後に「将来看護師・保健師」になろうとしている学生に励ましのこと
  ばを語り、真剣にお話を聞いていただいたお礼として歌「翼をください」 を歌っ
  て60分の授業の締めくくりをしました。

  大矢顧問の話を聞いた学生の感想は
 
  「透析生活をしている方の生活が具体的に理解できた
  「透析は命をつなぐ仕事」という言葉が印象に残った
  「命に対して真剣に向き合っておられる大矢顧問の考え、生き方を学ぶ
   ことができ尊敬

  「常に相手の気持ちになってケアできる看護師になりたい」等、将来看護
    師等として働くにあたっての姿勢や今後の学習の必要性を感じる授業と
   なったようです。




県立看護大学での透析授業風景 (大矢顧問)
『透析患者の生活』を語る